Skip to content
広告費を8割削って、EC売上を前年比130%に — アルプロン 導入事例

支援事例実績一覧へ

広告費を8割削って、EC売上を前年比130%に — アルプロン 導入事例

最終更新日: / 公開日:

最終更新日: / 公開日:

「広告を止めたら、売上が落ちる」。D2C の経営者がまず口にする不安です。だから赤字でも広告は止められず、CPA が上がるほど出稿を増やして、利益はさらに薄くなる。

国内プロテイン/サプリメントメーカーのアルプロンは、この構造の出口を逆側に見つけました。Web 広告予算を 80% 削減し、EC 経由売上は前年比 130%。年間約 1 億円の広告赤字だった事業が、1 年半で高利益率の構造に変わりました。

削る勇気は、根性ではなくデータから来ています。

案件概要

クライアント
株式会社アルプロン国内中堅のプロテイン/サプリメントメーカー・D2C
期間
2021年5月〜2022年10月(約1年半)
関与形態
オンライン事業部の統括として参画(業務委託)。経営陣直下でプロジェクトを推進
スコープ
全体戦略の再設計、CRM 導入・顧客分析、EC プラットフォーム刷新、広告予算の再配分、オウンドメディア・LINE/Email 施策、新商品企画、SNS 専任メンバーの採用(組織づくり)、インフルエンサー PR
EC 経由売上 前年比 130% 直販上半期は前年同期比 192% の月も
Web 広告費 475 万円91 万円 約 8 割削減 — それでいて ROAS は 269% → 480% とほぼ倍増
売上に占める値引き率 23%4% クーポン(値引き)依存からの脱却
インフルエンサー PR 実施月 月の広告費に対して 13 倍の売上 ROAS 1,300% 超。実店舗にも波及

出典: 当時の予算管理・売上管理シート実測

課題

売れば売るほど薄くなる「負のループ」

支援開始時のアルプロンの EC 事業は、構造的な悪循環の中にありました。

  1. ブランドの希薄化: ターゲットもデザインもばらばらの商品が並び、価格競争に依存
  2. マーケティングの不健全化: LTV を考慮しない「掛け捨て型」の広告運用で、年間約 1 億円の広告赤字
  3. データ基盤の欠如: 顧客像が見えず、施策は勘と経験に依存。社内に共通言語がない

しかも外部環境は原料原価の高騰局面。広告で客を買い続ける構造のままでは、利益改善の道筋が描けない状態でした。

参画の経緯

始まりは「EC の見た目」の相談だった

最初の依頼は事業再建ではなく、EC サイトのリニューアル制作でした。当時のアルプロンの公式 EC は MakeShop の購入テンプレートで運用されており、見た目に素人感があり、ブランド毀損の恐れがある。当時普及し始めていた Shopify への移行相談です。

提案したのは、テンプレートを買って簡易実装することではなく、フルオリジナルデザインでの構築でした(実装の中身は後述します)。

転機は制作の進め方にありました。サイトに直接関係する範囲を超えて、マーケティング動線やオンライン事業全体の戦略提案を重ねた結果、「EC 事業部全体を見てほしい」と統括を任されることになります。

そして事業全体を見たとき、費用対効果の悪い Web 広告と原価率の構造から出した判断が、「広告の改善では、この事業は救えない」。集客施策の最適化ではなく、間接コスト削減・商品企画・販売経路までを含む全体戦略の見直しを経営陣に提案し、経営陣直下でプロジェクトを進める体制になりました。

アプローチ

4 つの柱

1. データ基盤の再構築 — 「誰が買っているのか」を初めて見る

CRM ツールを導入し、オンライン/リテール全チャネルの顧客データ(約 3 万人)を統合しました。既存顧客 267 名へのアンケート(26 問)を実施し、競合他社は信用調査レポート(TSR/TDB)を取得して財務レベルまで分析。「勘と経験」で動いていた事業に、判断材料を揃えていきました。そして見えてきた事実が、事業の転換点になります。

売上の大半は、特定の周期でまとめ買いをするリピーターだった。

新規獲得の広告で年間約 1 億円の赤字を出していた一方で、事業を支えていたのは既存顧客の繰り返し購入。この一枚の分析が「広告を削っても売上は守れる」という試算の根拠になり、全社の共通認識になりました。

2. EC 基盤の作り直し — 現場の運用を壊さずに、土台を入れ替える

施策を実行するには、それを載せられる土台が要ります。MakeShop の購入テンプレートで動いていた公式 EC を、Shopify でフルオリジナルに作り直しました。

ただ、EC の入れ替えには固有の怖さがあります。サイトが新しくなった初日から、現場は今までどおり出荷しなければならない。そこで制作に入る前に、現場が普段どう EC を回しているかの棚卸しから始めました。壊していいものと、壊してはいけないものを分けるためです。

その上で、テンプレートでは実現できない機能を作り込み、EC と実店舗の在庫管理システムを繋ぎました。オンラインとリテールで在庫が分断されていると、事業の数字は最後まで揃いません。

運用フローを壊さない移行の進め方は、EC を作り替えても、現場の運用は変えないで詳しく書いています。

フルオリジナルで構築した EC サイトの画面群
フルオリジナルで構築した EC。商品のカテゴライズ動線・定期購入・実店舗との在庫連携まで実装しました。

3. 予算の付け替え — 広告からストック型資産へ

2021 年 11 月、値引き価格の改定とクーポンの利用停止を断行し、広告費に上限を設定しました。ここが転換点です。

  • Web 広告予算を大幅削減し、オウンドメディアと LINE/Email のオートメーション配信へ再配分。転換後は検索(SEO)経由の売上が広告経由の約 2.8 倍という構造に
  • リピーターの購入周期に合わせた CRM 施策で、広告なしで売上を維持する導線を構築
  • クロスセル/アップセル専用製品の拡充と生産計画の見直しで、高利益率化を同時に推進

値引きにも同じ原則を適用しました。売上の 23% を食っていたクーポン費用は 4% まで下がり、限定フレーバー企画は値引きゼロ・値上げでも 2 週間で完売するようになっています。

新商品を出す速度を落とさないために、商品 LP も 1 枚ずつ作るのをやめて型にしました(色とテキストの差し替えで展開できる商品 LP の型)。

そして EC の外側にも収益源を足しています。工場の設備条件から、小ロットのプロテイン OEM を BtoB のサービスとして立ち上げました(工場の設備が、そのまま売り物になった)。

4. 象徴的な PR — 「マス認知 → 刈り取り」の構造を、低予算で作る

コスト構造の改善と売上の微増までは、ここまでの施策で到達しました。しかし刈り取り型の広告は、セールと新商品発売のタイミングでしか大きく数値が動きません。数値を大きく動かす定石は、大企業がやるようにマス向けの認知広告で指名検索の需要を作り、それをウェブ広告で刈り取って ROAS を上げることです。ただし、CM を打つ予算はない。

そこで立てた仮説が、「実力のあるクリエイターの案件動画をバズらせれば、同じ構造を低予算で作れる」でした。

起用の選び方にも根拠があります。それまで別提案で小規模に行われていたマイクロインフルエンサーへのギフティングは、成果が出ていませんでした。humbulls は登録者数や再生数ではなく、筋トレインフルエンサー界隈の「コアプレイヤー」が誰なのかを、新規・古参・流行の構造まで分析。(1) 当時で登録者 10 万人超の影響力、(2) 界隈の主要メンバーとのコラボが頻繁な「ハブ」であること、(3) 商品紹介案件でも誠実でエンゲージメントが高いこと。この 3 条件で選んだのが、レモンちゃんねるさんでした。

設計に仕掛けがあります。依頼したのは「褒めてください」ではなく、「全部、好き勝手に評価してください」でした。デザインがドンキっぽすぎる、味も匂いも正直トイレの芳香剤みたい。そうした酷評が出ることを織り込んだ上で、忖度なしのレビューを歓迎しました。

さらにその悪評を、そのままキャンペーン LP に載せました。取り繕わないブランドの姿勢は SNS で「この企画、分かってる」と評価され、プチバズに。酷評がそのまま話題と信頼の源になる構造です。企画から LP 制作、運用まで社内で回しました。

キャンペーンLPに掲載された忖度なしのレビュー。「めっちゃ不味い!」などの酷評がそのまま並び、Bad! の評価アイコンが付いている
実際のキャンペーン LP。動画で出た酷評を、評価アイコンごとそのまま商品ページに載せました。
出典: 当時のキャンペーン LP のアーカイブ(2026年7月19日取得)
LP に掲載されたアルプロン担当者のコメント。「そろそろ進化が必要ということに気づかされました」と自ら応答している
同じ LP の別セクション。酷評に対して、アルプロンの担当者自身が応答しています。取り繕わない姿勢が伝わったのは、この往復があったからです。

悪評の開示には、もう一つの狙いがありました。当時、社内では翌年のリブランディングが控えていました。デザインや味への批判は、刷新後に「こんなに変わった」を見せるための布石でもあります。Before がダサかったと知られていなければ、After のインパクトは薄まってしまいます。

結果、動画公開後 8 日間で公式ショップ全体売上の 37% がキャンペーンクーポン経由になり、クーポン利用者の 84% が 1 万円以上のまとめ買い。実施月は月の広告費に対して 13 倍の売上(ROAS 1,300% 超)となり、効果はリテール(実店舗)側の数字にまで波及しました。値引き客ではなく、ブランドのファンになる新規客が入ってきたことが数字に出ています。

広告の入稿やレポーティングは、アルプロンが以前から付き合っていた別の代理店が担当していました。その代理店と社内チームからも、こんな数値は見たことがない、という反応がありました。

実物はいまも見られます: レビュー動画(YouTube) / 当時のキャンペーン LP(※リンク切れ時は魚拓を掲載)

この関係は単発では終わりませんでした。humbulls の支援終了後も、アルプロンとレモンチャンネルのコラボは続いており、2025 年にも新作動画が公開されています。施策ではなく、資産になった関係です。

代表のハラダマンさんは企画の趣旨を深く汲み取り、こちらの想定を超えるコンテンツを作ってくださいました。いまでも頭が上がりません。(humbulls 代表・栗田)

キャンペーンLPのファーストビュー
LP のファーストビュー。企画・制作・運用まで内製しました。

成果

  • EC 経由売上: 前年比 130%
  • Web 広告費: 月 475 万円 → 91 万円(約 8 割削減)、ROAS は 269% → 480% にほぼ倍増
  • 値引き依存からの脱却: クーポン率 23% → 4%
  • インフルエンサー PR: ROAS 1,300% 超、実店舗へも波及
  • 拡張性の高い EC プラットフォームへのフルリニューアル完遂
  • 商品ごとに特徴を整理したブランド定義、データに基づく共通言語が社内に定着
  • 支援終了後もブランド刷新を経ながら、構築した基盤は現在も使われ続けています。当時の契約書には「最終的にコンサルがいなくても自走可能な状態にすること」を目的として明記していました

この事例が示すこと

広告費を削れないのは、削った後に何が起きるか分からないからです。アルプロンの場合、CRM が「売上はリピーターが支えている」と示したことで、削る判断が賭けではなく計算になりました。

順番が重要です。先に広告を削るのではなく、先にデータ基盤を作り、削れる根拠を見つけてから削る。「フロー型からストック型へ」は標語ではなく、この順番の実務です。

この構造は商材を選びません。リピート購入のある消耗品 D2C(食品・コスメ・サプリ・日用品)なら、売上を支えている顧客構造はデータの中に必ずあります。見えていないだけです。


この経験は、いまの humbulls の提案の原点です

「事業部の統括として中に入ったからできた話では?」と思われるかもしれません。半分はその通りです。ただ、この案件でやったことの本質は、事業の実態をデータで見えるようにしてから、お金と労力の置き場所を変えることに尽きます。その順番は、中に入っても外から伴走しても変わりません。現在の humbulls も、同じ考え方で月額の伴走支援を提供しています。

違いは実行速度です。当時 1 年半かけた CRM 導入・コンテンツ制作・レポーティングの多くを、いまは AI との共創で数分の一の期間で回しています。

同じ構造で悩んでいるなら、まず現状を見せてください。

広告を削れるかどうかは、データを見れば60分で見当がつきます。無料オンライン相談会では、いまの数字をその場で一緒に整理して、次の30日で何をするかまで決めて持ち帰ってもらいます。売り込みはしません。

こんな記事も読まれています