本記事のポイント
「スタートアップで、初めての専任マーケとして採用された。でも、何をどの順で作ればいいのか分からない」。私たち humbulls が一人マーケ体制の立ち上げを支援するなかで、最もよく聞く声のひとつです。
この行き詰まりの原因は、担当者の力量でも情報の不足でもありません。
走り出す前に、いきなり完璧な戦略資料を作ろうとしていることにあります。
本記事では、着任 30 日で作る「1 枚の計画表」の型を、現状把握から週次運用まで解説します。特別なスキルは要りません。型と、巻末の AI 実行キットがあれば再現できます。
「まず戦略をきちんと固めてから動きたいので、いま市場分析の資料を作っています」。着任 2 週間目の一人マーケから、よく届く報告です。
気持ちは分かりますが、順番が逆です。
立ち上げ期に成果が出ない最大の原因は、施策の質ではなく着手の遅さにあります。
着任直後は情報も権限も限られています。そこで作る「完璧な戦略資料」は、たいてい仮説の塊です。40 ページの資料を 1 ヶ月かけても、最初の施策を回すまで市場からの反応はゼロのままです。
着任論の古典 The First 90 Days でも、立ち上げ期に効くのは完璧な計画づくりではなく「早く学び、早く小さく動くこと」だと繰り返し示されています。
そこで最初の 30 日で作るのは、40 ページの戦略書ではなく 1 枚の計画表です。中身は 4 つだけです。
これを 1 画面に収めて、2 週目には最初の施策を動かし始めます。
よくある失敗は、この計画表を「あとで清書する下書き」だと思ってしまうことです。清書のつもりで作ると、また作り込みが始まります。
計画表は提出物ではなく、自分が毎週見て動かす操縦席です。汚くていいので 30 日以内に 1 枚に収める。ここから始めてみてください。
「現状を把握しろと言われても、前任者もいないし、資料もバラバラで、どこから見ればいいのか分からない」。着任 1 週間目に必ずぶつかる壁です。
現状把握でつまずくのは、情報がないからではなく、情報が散らばったまま「使える 1 枚」になっていないからです。
着任した会社には、たいてい材料はすでにあります。過去の広告アカウント、Google Analytics、問い合わせ履歴、CRM の商談データ、営業資料。足りないのは新しい調査ではなく、これらを 1 枚に束ねる作業です。
マーケ計画の定石も、目標や施策の前にまず現状 (数字・資産・顧客) の把握を置きます。
やることは、着任 1 週間で「今ある材料」を 4 区分で棚卸しすることです。
この棚卸しは、既存データを AI に渡せば早く済みます。Analytics の画面や問い合わせ一覧、資料のフォルダ構成をそのまま貼り付け、4 区分のサマリー表に整形させます。
humbulls の運用では、こうした散らばった生データを 1 枚に束ねる作業に 30 分ほどしかかけていません。目的は完璧な現状分析ではなく、次章で目標を置くための土台づくりだからです。
→ この現状棚卸しは、巻末の 実行キット① (所要 30 分) でそのまま実行できます。
よくある失敗は、この段階で「データがきれいに揃っていない」と気にしすぎることです。着任直後の現状把握に、精度は要りません。
空欄があってもいいので、まず全体像を 1 枚にする。埋まっていない欄こそが、最初に着手すべき施策のヒントになります。
「KPI ツリーをちゃんと作りたいのですが、指標が多すぎて、どれを追えばいいのか分からなくなります」。目標設計の相談で、最もよく聞くつまずきです。
原因は、実データがない着任初月に、最初から完全な KPI ツリーを組もうとしていることです。
精緻な指標体系を作っても、実データがなければ数字はほぼ当てずっぽうになります。ここで置くべきは完璧なツリーではなく、事業の成長を代表する 1 つの中核指標 (北極星指標) と、その手前の中間指標だけです。
North Star Metric の考え方でも、追う指標を 1 つに絞ることが立ち上げ期の要とされています。
置き方は、売上から逆算する 1 本の線でいきます。
数字が曖昧でも構いません。仮置きの目的は正確な予測ではなく、施策を選ぶときの物差しを 1 本持つことです。
「この施策は北極星 (例: 月間リード 40 件) に効くか」で判断できるようになれば、目標は役目を果たしています。逆算の型そのものは、施策の優先順位づけを扱った BtoB マーケ施策の優先順位づけ とも接続します。
→ 売上からの逆算と北極星指標の指名は、巻末の 実行キット② (所要 20 分) で下書きできます。
よくある失敗は、追う指標を 5 個も 6 個も並べてしまうことです。指標が増えるほど、どれも中途半端に眺めるだけになります。
北極星は 1 つ。残りはその補助線と割り切ると、週次の判断が速くなります。
「やったほうがいい施策を挙げたら 15 個になりました。全部は無理なので、どれを削るか悩んでいます」。計画表づくりで、いちばん手が止まるところです。
原因は根性不足ではなく、施策を「良さそうかどうか」で選び、自社の詰まりに紐づけていないことにあります。
一人マーケの立ち上げ期に、施策を一度に 10 個も動かすことはできません。BtoB マーケティングは認知から受注までの一本の流れです。どこが詰まっているかを先に決め、そこに効く施策だけを最初の 3 本に選びます。
3 本という数は、一人が週次で回しながら反応を見られる現実的な上限です。
絞り込みの起点は、施策一覧ではなく前章で置いた北極星と現状の数字です。
最初は各段階から欲張らず、詰まりの一番深いところに 2 本、次点に 1 本で十分です。施策を精緻に採点して順位づけする方法は BtoB マーケ施策の優先順位づけ で詳しく扱っていますが、着任初月は「詰まりに効く 3 本」まで絞れれば前に進めます。
よくある失敗は、絞った 3 本以外の施策を「やらないリスト」に落とさず、頭の中に残しておくことです。残しておくと、結局あれこれ手を出して 3 本が回りません。
選ばなかった施策は計画表の外の「保留リスト」に明記し、視界から外します。絞るとは、捨てる先を決めることです。
「現状も目標も施策も決まったのに、それぞれ別のファイルに散らばっていて、結局どこを見ればいいのか分からなくなりました」。計画表づくりの最後で起きがちな失敗です。
現状・目標・施策を別々のドキュメントに書くと、どれも開かなくなります。
立ち上げ期の計画は、1 画面で全部が見える 1 枚でなければ運用されません。スプレッドシート 1 シートに、施策 3 本を行に、次の 7 列を並べます。これがそのまま使えるテンプレです。
| 列 | 意味 | 記入例 |
|---|---|---|
| 施策名 | 何をやるか (3 本に絞る) | 比較軸の SEO 記事 5 本 |
| 狙うファネル段階 | 認知 / 獲得 / 育成 / 受注 のどこか | 獲得 |
| 今月の数値目標 | 北極星に紐づく中間指標 | 自然検索 CV 15 件 |
| 担当 (AI / 人) | AI に渡す工程と人が握る工程 | 構成・初稿=AI / 公開判断=人 |
| 着手週 | 30 日のどの週で動かすか | W2 |
| 進捗 | 未着手 / 進行 / 完了 | 進行 |
| 見直しトリガー | いつ差し替える・やめるか | 4 週で CV ゼロなら差し替え |
7 列に揃える狙いは、施策ごとに「何を・どの段階で・いくつ・誰が・いつ・今どこまで・いつ捨てるか」を強制的に言語化させることです。
とくに効くのは右端の「見直しトリガー」列です。着手時に「やめる条件」を書いておくと、成果の出ない施策を惰性で続けずに済みます。
「担当 (AI / 人)」列も一人マーケには重要です。初稿やリサーチを AI に渡す前提で書くと、3 本を一人で回せる分量に収まります。実際、humbulls では制作工程を AI に寄せることでホワイトペーパー制作を 5 日から 1 日に短縮しており、この列の設計次第で回せる施策数が変わります。
→ 現状・目標・施策を 1 枚の計画表に組む作業は、巻末の 実行キット③ (所要 30 分) で下書きできます。
よくある失敗は、この計画表に列を足しすぎることです。予算・KPI 詳細・担当者メモと足すうちに、また開かない資料に戻ります。
1 画面に収まる 7 列を上限にし、詳細は別シートへ回します。計画表は薄いほど毎週開かれます。
「計画表は作りました。でも、作ったあと一度も開いていません」。立ち上げ支援で、着任 2 ヶ月目にいちばん多い告白です。
計画表が死ぬのは、出来が悪いからではなく、更新する時間を決めていないからです。
着任初月に置いた数値目標も施策も、あくまで仮説です。市場からの反応で毎週ずれていくのが当たり前で、計画表は提出したら終わりの資料ではなく、週次で更新する生き物として扱います。
週 1 回 15 分、進捗列を塗り替え、見直しトリガーに触れた施策を差し替える。これだけで計画表は操縦席であり続けます。
回し方はシンプルです。
数字の集計や差分の抽出は AI に任せられます。この曜日固定の週次運用を含む一人マーケの回し方は、一人マーケターの業務設計 で 1 週間モデルとして具体化しています。AI をどの業務から入れるかの順番設計は マーケ業務の AI 効率化ロードマップ が参考になります。
よくある失敗は、週次レビューで施策を増やす方向に使ってしまうことです。反応が薄いと「別の施策も足そう」となりがちですが、3 本を維持したまま中身を差し替えるのが原則です。
枠を増やさず、回転させる。これが一人で立ち上げを続けるコツです。
一人マーケの立ち上げに必要なのは、分厚い戦略資料でも完璧な KPI ツリーでもありません。着任 30 日で、現状把握・数値目標・施策 3 本を 1 画面に収めた 1 枚の計画表を作り、週次で回すことです。
型はシンプルです。
この型にすれば、着任 2 週目には最初の施策が動き出します。まずはキット①の現状棚卸しから始めてみてください。
一人マーケ体制の立ち上げを外部の視点で伴走してほしい場合は、humbulls の Fractional CMO サービス で週次の設計から運用まで支援しています。この計画表づくりを含む BtoB マーケの立ち上げ全体像は、BtoB マーケ AI 活用ガイド (無料 DL) にまとめています。
本文の判断と実装を、そのまま AI で実行するためのキット集です。プロンプトは Claude (ブラウザ版で可) にコピペすれば動きます。
種別: 判断キット 使うもの: Claude (ブラウザ版で可) 事前に用意するもの: 前任者や社内から集められる材料の生データ。Google Analytics の画面、問い合わせ一覧、既存の記事・資料のフォルダ構成、CRM の商談リスト、使えるツールと予算のメモ。整形せず、バラバラのまま貼る方が実態に近い結果になります。
プロンプト:
私はこの会社に着任したばかりの一人マーケ担当です。散らばった材料を渡すので、
現状サマリーを 1 枚に束ねてください。
【今ある材料】(手元にあるものだけ貼る。空欄があってもよい)
- 流入・数字: (例)月間セッション 2,400/問い合わせ 8 件/既存リード 320 件
- 制作資産: (例)ブログ 12 本、事例 2 本、会社紹介スライド、展示会バナー
- 顧客・受注: (例)直近の受注 5 社は製造業の品質管理部門が多い/失注理由は価格
- 体制: (例)HubSpot Starter、広告予算 月 15 万円、マーケ実働 1 日 5 時間
- (以下、自社の生データを貼り付け)
やってほしいこと(必ずこの基準に従うこと):
1. 材料を次の 4 区分に整理する:
数字(入り口の太さ)/ 資産(再利用できる制作物)/
顧客(誰に効いているか・失注理由)/ 体制(ツール・予算・実働時間)
2. 各区分を表にまとめる。データが無い項目は「不明(要調査)」と明記する
3. 「入り口が細い/CV が少ない/商談にならない」のどこに詰まっていそうか、
数字から言える範囲で仮説を 1 つ立てる(データから言えないものは「未確認」と書く)
4. 着任初月に最初に埋めるべき情報の欠落を 3 つ挙げる
出力の確認ポイント: - 「不明(要調査)」がどの区分に多いかを見てください。空欄の偏りが、最初に着手すべき調査を教えてくれます - 詰まりの仮説が「データから言える範囲」で書かれているか。断定しすぎていたら、根拠の数字を追記させてください - この 4 区分サマリーは次のキットでも使うので、そのまま残しておくこと
うまくいかないとき: - 材料が少なすぎてサマリーが埋まらない → 現時点で分かるものだけで確定し、「要調査」項目を着任初週のヒアリング項目として使う - 顧客の共通点が出ない → 受注した会社名と業種・部署だけでも貼ると、傾向が見えやすくなります
種別: 判断キット 使うもの: Claude (ブラウザ版で可) 事前に用意するもの: キット①の現状サマリー、半期〜1 年の売上目標、分かる範囲での商談単価・商談化率・CVR (無ければ仮の数字でよい)
プロンプト:
一人マーケの立ち上げ期です。売上目標から逆算して、今期追う「北極星指標」を
1 つと、その手前の中間指標を仮置きしてください。
【前提】
- 売上目標: (例)今期 6 ヶ月で 3,000 万円
- 商談単価: (例)1 件あたり平均 300 万円(不明なら仮で置いて「仮」と明記)
- 商談化率: (例)リード→商談 5%(不明なら仮)
- CVR: (例)セッション→CV 2%(不明なら仮)
- 現状サマリー: (キット①の出力を貼り付け)
出力(必ずこの条件に従うこと):
1. 売上目標を商談単価で割って必要受注件数を出し、そこから
必要リード数・必要セッション数まで 1 本の線で逆算する(計算式も見せる)
2. 現状の数字と逆算後の必要数を並べ、一番大きく足りない段階を特定する
3. その「一番足りない段階」に対応する中間指標を「今期の北極星」に 1 つ指名する
4. 北極星を月次の数値目標に割り戻す(例: 半期 240 リード → 月 40 リード)
5. 仮の数字を使った箇所はすべて「仮・要検証」と明記する
出力の確認ポイント: - 北極星が 1 つに絞られているか。2 つ以上出てきたら「最も詰まっている 1 段階だけ選べ」と指示し直す - 月次目標が現状比で極端に非現実的(例: 現状の 10 倍)なら、売上目標か期間の前提を見直すサイン - 仮の数字の箇所が「仮・要検証」と明記されているか。着任初月はここが曖昧で当然です
うまくいかないとき: - 商談単価も商談化率も全く分からない → 業界の一般値で仮置きし、初月の実データで上書きする前提で進める - 逆算するとセッション必要数が現実離れする → 獲得施策だけでなく CVR 改善も選択肢に入れるよう追記させる
種別: 実装キット 使うもの: Claude (ブラウザ版で可)。出力表はそのままスプレッドシートに貼れます 事前に用意するもの: キット①の現状サマリー、キット②の北極星と月次目標、動かしたい施策の候補メモ
プロンプト:
着任 30 日の一人マーケ計画を「1 枚の計画表」にまとめてください。
施策は 3 本に絞り、次の 7 列でスプレッドシートに貼れる表にすること。
【入力】
- 現状サマリー: (キット①の出力)
- 今期の北極星と月次目標: (キット②の出力)
- 施策候補(思いつく限り。ここから 3 本に絞ってもらう): (例)比較 SEO 記事/
ホワイトペーパー配布/失注フォロー/展示会/広告/ウェビナー…
出力(必ずこの条件に従うこと):
1. 施策候補を、キット①で特定した「詰まっている段階」に効く順に並べ替える
2. 上位 3 本だけを採用し、残りは表の下に「保留リスト」として列挙する
(3 本に入れなかった理由を各 1 行)
3. 採用 3 本を次の 7 列の表にする:
| 施策名 | 狙うファネル段階 | 今月の数値目標 | 担当(AI/人) | 着手週 | 進捗 | 見直しトリガー |
4. 「担当(AI/人)」は、初稿・リサーチ・集計など AI に渡す工程と、
公開判断・顧客対応など人が握る工程を分けて書く
5. 「見直しトリガー」は必ず数字と期限で書く(例: 4 週で CV ゼロなら差し替え)
6. 着手週は W1〜W4 に散らし、1 週に着手が集中しすぎないようにする
出力の確認ポイント: - 3 本が全部同じファネル段階に偏っていないか。詰まりが 1 段階なら偏ってよいが、意図した偏りか確認する - 「見直しトリガー」が全施策で数字+期限になっているか。「様子を見る」等の曖昧な条件は書き直させる - 「担当」列で AI に寄せた結果、3 本を自分の実働時間で回せる分量に収まっているか
うまくいかないとき: - 施策が 3 本に絞られず 5 本出てくる → 「北極星に最も効く 3 本だけ。残りは全て保留」と再指示する - 数値目標が施策ごとにバラバラの単位になる → 北極星(月次目標)に紐づく中間指標で単位を揃えさせる