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リードスコアリングの設計手順 — 初期モデルを AI で 1 時間で作る|humbulls

作成者: Kazuki Kurita|Jul 10, 2026 5:29:28 AM

本記事のポイント

  • リードスコアリングは、MQL を 1 文で定義してから Fit (属性) と Behavior (行動) を分け、合計点だけでなく両方の最低点を満たしたリードだけを営業へ渡す仕組みです
  • 初期モデルは Fit 40 点・Behavior 60 点の 100 点満点で十分です。ただし、この配分は公式推奨値ではなく、自社データで補正するための出発点です
  • 過去データを AI で比較すれば配点表は 1 時間で作れます。実装後は 30 / 60 / 90 日の 3 回で閾値と配点を見直します

「資料をダウンロードしただけの人まで営業に渡ってしまう」「スコアはあるのに、営業が信用していない」。humbulls が支援するなかで、リードスコアリングについてよく聞く悩みです。原因はデータ不足ではなく、MQL の定義より先に点数を付けていることにあります。

本記事では、Fit 40 点・Behavior 60 点の初期モデルを作り、HubSpot または Apps Script に実装するまでの型を解説します。特別な統計スキルは不要で、過去データと巻末の AI 実行キットがあれば、最初の配点表は 1 時間で作れます。

1. 100 点の配点表より先に決めること — MQL 定義を 1 文にする

「料金ページを見たから 10 点、メールを開いたから 2 点。合計 50 点なら MQL でいいですか」。配点会議は、このように個別の行動から始まりがちです。

リードスコアリングとは、見込み客の属性と行動に点数を付け、営業が追う順番を揃える仕組みです。HubSpot の現行ツールでは、属性を見る Fit score、行動を見る Engagement score、両方を合わせる Combined score の 3 種類があります。

点数を付ける前に、「誰が、何をしたら営業へ渡すか」を 1 文にしてください。

たとえば、MQL を次のように定義します。

対象業界・従業員 50 名以上の企業に所属し、過去 30 日以内に料金ページを閲覧したか、相談フォームを送信した担当者

この 1 文には、Fit の条件が 2 つ、Behavior の条件が 1 つ入っています。先に定義があれば、点数は条件の重みを表すだけになります。MQL と SQL の境界がまだ言葉になっていない場合は、先に MQL と SQL の違いと定義 を決めてください。

よくある失敗は、100 点満点の表を先に作り、後から「50 点以上を MQL と呼ぶ」と決めることです。これでは高得点の理由と営業が追う理由が一致しません。MQL の文章を作り、その条件を点数へ翻訳する順番なら、営業にも説明できます。

→ MQL 定義から初期配点へ変換する作業は、巻末の 実行キット① で進められます。

2. Fit 40 点・Behavior 60 点 — 初期モデルを 2 群に分ける

「会社規模を重くするか、問い合わせを重くするかで議論が終わらない」。同じ 100 点の中で属性と行動を混ぜると、配点の根拠が見えなくなります。

最初は Fit 40 点、Behavior 60 点に分けると整理しやすくなります。HubSpot の既定スコア上限も 100 点で、Combined score では合計・Fit・Engagement の 3 つのプロパティを持てます。

以下は BtoB サービスを想定した初期モデル例です。HubSpot の公式推奨配点ではありません。

Fit (最大 40 点) 点数 Behavior (最大 60 点) 点数
対象業界に一致 10 相談・デモフォーム送信 25
従業員規模が対象範囲 10 料金ページを 30 日以内に閲覧 15
部門・役職が購買関与者 10 導入事例または料金資料を DL 10
対象地域に所在 5 ウェビナーに参加 5
利用中ツールが連携対象 5 メール内リンクをクリック 5
合計 40 合計 60

Behavior を 60 点にしたのは、行動が営業の優先順位へ直結しやすいからです。一方で Fit を 0 点にすると、対象外企業が資料を何度も見ただけで上位へ来ます。40 点を残すことで、「関心は高いが対象外」と「対象企業で関心も高い」を分けられます。

加点だけではなく、対象外を下げる減点も置きます。採用応募・競合・ベンダー営業は -30 点、メール配信停止は -10 点、といった形です。HubSpot も positive / negative points の両方に対応しています。

よくある失敗は、メール開封やページ閲覧を無制限に加点することです。同じ人が 10 回見ただけで点数が膨らみます。項目ごとの上限を決め、問い合わせや商談予約のような強い行動へ点数を寄せてください。

3. MQL 閾値は合計点だけで決めない — 3 条件を AND でつなぐ

「合計 65 点なのに、営業が見ると対象外企業だった」。合計点だけを条件にすると、こうした逆転が起きます。

初期モデルでは、次の 3 条件をすべて満たしたときだけ MQL とします。

  1. 合計が 50 点以上
  2. Fit が 20 点以上
  3. Behavior が 30 点以上
リード Fit Behavior 合計 判定
A: 対象企業 + 相談フォーム 30 35 65 MQL
B: 対象外 + 行動多数 10 55 65 保留
C: 対象企業 + 行動少数 35 15 50 ナーチャリング
D: Fit・行動とも低い 15 20 35 対象外

MQL は 50 点の人ではなく、Fit 20 点・Behavior 30 点・合計 50 点をすべて超えた人です。

この数値も初期値です。自社の平均単価、営業人数、月間リード数で変わります。

大事なのは、合計点だけで判定しないことです。

HubSpot の Combined score にある A1〜C3 の区分も、Fit と Engagement を別々に見る同じ考え方です。

よくある失敗は、MQL 件数を増やすために合計閾値だけを 50 から 40 へ下げることです。件数は増えても、低 Fit のリードが混ざれば営業の受け取り率は下がります。調整するときは Fit・Behavior・合計のどこが詰まっているかを分けて見ます。

→ 3 条件を含む初期配点表は、巻末の 実行キット① で作れます。

4. 過去データを AI で比較する — 初期配点を 1 時間で作る

「配点に根拠が必要なのは分かる。でも分析担当者はいない」。ここで AI を使います。

必要なのは、過去の転換・未転換リードを同じ列で並べた表です。列は会社規模、業界、役職、流入元、主要ページ閲覧、フォーム送信、最終ステージなど。氏名・メールアドレスは分析に不要なので外します。

1 時間の使い方は次の通りです。

時間 作業 出力
0〜10 分 MQL 定義と候補項目を渡す Fit / Behavior の列分類
10〜25 分 転換・未転換データを整える 欠損・表記ゆれの一覧
25〜45 分 両群の差を比較する 転換群に偏る項目の候補
45〜60 分 40 / 60 点へ配分する 初期配点表と根拠

AI に任せるのは、差の整理と配点案の作成までです。「この項目なら必ず転換する」と予測させる作業ではありません。件数が少ない場合は、根拠欄に「データ不足」と書かせ、担当者の仮説と分けます。

HubSpot の AI score は Marketing Hub Enterprise 限定で、最低 50 件、内訳は転換 25 件・未転換 25 件が必要です。この数字は AI score の利用条件であり、手動モデルの品質保証ラインではありません。50 件に満たないチームは、仮説モデルとして始めて 90 日の運用データで補います。

よくある失敗は、AI に点数だけを出させることです。「対象業界 +10」の横に、転換群と未転換群の件数差、採用理由、見直し条件まで出させます。根拠が読めない点数は、営業との会議で残りません。

→ 匿名化した表から配点根拠まで出す指示は、巻末の 実行キット① にまとめています。

5. HubSpot / Starter に実装して 90 日で補正する

「モデルはできた。でも今のプランではスコアリング画面が見つからない」。HubSpot の標準スコアは Marketing Hub Professional / Enterprise、または Sales Hub Professional / Enterprise が対象です。

プランによって実装を分けます。

環境 実装方法 更新
HubSpot Professional / Enterprise Combined score に property group と event group を設定 HubSpot が履歴を含めて再計算
HubSpot Starter Sheets で Fit / Behavior / Total を計算し、Apps Script でカスタムプロパティへ書き戻す time-driven trigger で日次更新

Professional 以上では、最初に 5〜10 件の既知リードを Test record で確認し、その後 Preview distribution で全体分布を見ます。上位 5% しか MQL にならない、または半数が MQL になるなら、ワークフローへつなぐ前に閾値を戻します。

Starter では lead_fit_scorelead_behavior_scorelead_total_score の 3 プロパティを作り、Sheets 側で計算します。

→ 日次同期は HubSpot を Apps Script で Sheets に同期 の構成をそのまま使えます。

Apps Script の time-driven trigger は自動実行できますが、指定時刻ぴったりではなく一定の時間帯で動きます。失敗時は作成者へ通知されるため、運用担当のアカウントで作成し、実行ログを月 1 回確認してください。

配点は 90 日間固定しません。次の順で補正します。

時点 見る数字 変更範囲
30 日 MQL 件数・営業受け取り率 明らかな対象外条件の減点だけ追加
60 日 MQL→SQL 転換・差し戻し理由 Fit / Behavior の最低点を調整
90 日 SQL→商談・受注との関係 各項目の配点と合計閾値を見直す

行動の鮮度が落ちる項目には減衰を入れます。HubSpot は 1・3・6・12 ヶ月の間隔を選べるため、初期モデルではページ閲覧やメール反応を 3 ヶ月で減衰させ、相談フォームや商談予約は別ルールに分けます。

よくある失敗は、配点変更と営業フロー変更を同じ日に行うことです。原因が分からなくなるので、1 回の見直しで動かすのは配点・閾値・運用のどれか 1 つにします。自動通知や担当者割り当ては HubSpot ワークフロー活用例 を参考に、分布確認の後で接続してください。

→ 実装仕様書は巻末の 実行キット②、90 日の補正は 実行キット③ で進められます。

まとめ

リードスコアリングは、細かな配点テクニックではなく、営業へ渡す理由を揃える仕組みです。MQL を 1 文で定義し、Fit 40 点・Behavior 60 点の初期モデルへ翻訳し、合計 50 点だけでなく Fit 20 点・Behavior 30 点も満たすようにします。ここまで決めれば、過去データの整理と配点案は AI で 1 時間に圧縮できます。

実装後の仕事は、30 / 60 / 90 日で営業の受け取りと商談化を見ながら補正することです。

リードを育てる前段の設計は リードナーチャリングの 5 ステップ、実装テンプレを含む全体像は BtoB マーケ AI 活用ガイド にまとめています。

まずはキット①へ過去データを貼り、初期配点表を作るところから始めてみてください。

🤖 AI 実行キット

本文の判断と実装を、そのまま AI で実行するためのキット集です。プロンプトは Claude (ブラウザ版で可) にコピペすれば動きます。

キット① 過去データから初期配点表を作る — 60 分

種別: 判断キット 使うもの: Claude (ブラウザ版で可。表が大きい場合は Claude Code) 事前に用意するもの: 転換・未転換リードを同じ列で並べた CSV または表。氏名・メールアドレスは削除し、会社規模 / 業界 / 役職 / 流入元 / 主要行動 / 最終ステージを残します。データがなければ、営業とマーケの会議メモでも始められます。

プロンプト:

リードスコアリングの初期配点表を作ってください。

【MQL の定義】
対象業界・従業員 50 名以上の企業に所属し、過去 30 日以内に
料金ページを閲覧したか、相談フォームを送信した担当者(記入例)

【過去データ】
(匿名化した CSV または表を貼り付ける。データがなければ
営業とマーケの会議メモを貼り付ける)

【分類・配点基準(必ずこの基準に従うこと)】
- 会社・担当者の属性は Fit、閲覧・送信・参加などの行動は Behavior
- 初期上限は Fit 40 点 / Behavior 60 点 / 合計 100 点
- MQL は Fit 20 点以上 AND Behavior 30 点以上 AND 合計 50 点以上
- 強い行動(相談・デモ・商談予約)を、弱い行動(開封・単純閲覧)より重くする
- 採用応募・競合・ベンダー営業・配信停止は減点候補にする
- データから差を確認できない項目は「データ不足」と書き、推測値と分ける

【出力】
1. Fit 配点表(項目 / 条件 / 点数 / 根拠 / 見直し条件)
2. Behavior 配点表(同じ列)
3. 減点表
4. MQL 閾値を満たす例 2 件、満たさない例 2 件
5. 営業と合意が必要な未確定事項

出力の確認ポイント:

  • Fit と Behavior の点数を合計して、それぞれ 40 / 60 を超えていないか
  • 根拠が「一般的だから」だけの項目は、仮説として表示されているか
  • 合計点だけで MQL を判定せず、Fit と Behavior の最低点が入っているか

うまくいかないとき:

  • すべての項目に同じような点が付く場合は、「相談フォームを 25 点として、他の行動を相対評価する」と基準点を 1 つ固定して再実行してください
  • データ件数が少ない場合は、精密な点数を求めず 5 点刻みの仮説モデルに戻します

キット② HubSpot / Starter の実装仕様書を作る — 30 分

種別: 実装キット 使うもの: Claude Code。HubSpot MCP がなければ、プロパティ一覧の CSV または画面スクショを入力にします 事前に用意するもの: キット①の配点表、契約中の HubSpot Hub とプラン、スコアに使う既存プロパティ一覧。

プロンプト:

次の配点表を HubSpot に実装する仕様書を作ってください。

【契約環境】
- Hub: Marketing Hub Starter(記入例。正式プランを書く)
- 更新頻度: 毎日 1 回(記入例)
- 配点表: (キット①の結果を貼り付ける)

【実装分岐(必ずこの基準に従うこと)】
A. Professional / Enterprise で標準 Lead Scoring が使える
   → Combined score、property group、event group、threshold を設計
B. Starter で標準 Lead Scoring が使えない
   → Google Sheets + Apps Script で計算し、lead_fit_score / 
      lead_behavior_score / lead_total_score の 3 property へ日次反映

【安全条件】
- 最初は既知の 5〜10 records だけで計算結果を確認する
- 全体分布の確認前に営業通知・担当者自動割り当てへ接続しない
- 同一行動の無制限加点を禁止し、項目ごとの上限を持たせる
- token / private app key はコードへ直書きしない

【出力】
1. 採用する実装分岐と理由
2. property / group / rule の一覧
3. テスト用 5 records と期待点数
4. 日次更新フロー
5. 公開前チェックとロールバック手順

出力の確認ポイント:

  • 契約プランで使えない標準機能を前提にしていないか
  • 3 つの点数を別プロパティで確認できるか
  • 営業通知をつなぐ前に、テストと分布確認が置かれているか

うまくいかないとき:

  • プラン判定が曖昧なら、HubSpot の Settings > Account Management > Billing で正式プラン名を確認して入力し直します
  • Starter 代替のコードが長くなりすぎたら、既存の Sheets 同期処理と score 計算を別関数に分けます

キット③ 30 / 60 / 90 日の補正レポートを作る — 20 分

種別: 判断キット 使うもの: Claude (ブラウザ版で可) 事前に用意するもの: MQL 一覧と、その後の営業受け取り / 差し戻し / SQL / 商談 / 受注の結果。件数だけでも動きます。

プロンプト:

リードスコアリングの補正案を作ってください。

【現在のルール】
- Fit 最低点: 20(記入例)
- Behavior 最低点: 30(記入例)
- 合計最低点: 50(記入例)
- 現在の配点表: (貼り付ける)

【運用結果】
(MQL / 営業受け取り / 差し戻し理由 / SQL / 商談 / 受注の表を貼る)

【補正基準(必ずこの順で判定すること)】
1. 対象外が混じる → 減点条件または Fit 最低点を見直す
2. 対象企業だが温度が低い → Behavior 最低点を見直す
3. 相談・商談予約が過小評価 → 強い行動の点数を見直す
4. 古い閲覧だけで高得点 → 1 / 3 / 6 / 12 ヶ月の減衰を検討する
5. 1 回の見直しで動かすのは配点・閾値・運用のどれか 1 種類だけ

【出力】
- 現状診断(データで言えること / 言えないことを分ける)
- 変更候補を優先順に最大 3 件
- 変更前後の判定例
- 次の 30 日に追う数字
- 変更を見送る条件

出力の確認ポイント:

  • 件数が少ないのに断定していないか
  • 3 件を超える変更を同時提案していないか
  • 営業の差し戻し理由が、Fit / Behavior のどちらへ効くか説明されているか

うまくいかないとき:

  • SQL や商談の結果がまだなければ、30 日レビューとして対象外混入と営業受け取り率だけを見ます。受注予測まで広げません

参考文献