本記事のポイント
「とりあえずインポートしたら、似たようなプロパティが 3 つも並んでしまった」。HubSpot を使い込むほど、よく聞く悩みです。
原因は運用者の雑さではありません。インポート時のマッピングや、担当者ごとのカスタムプロパティ作成が積み重なると、誰でもこうなります。
本記事では、この乱立状態を安全に 1 本へ統合する手順を、HubSpot の公式仕様に沿って STEP 順に解説します。特別なスキルは不要で、型と巻末キットがあれば再現できます。
整理を始める前に、多くの人がつまずく事実を先に共有します。設定画面のどこを探しても、プロパティ同士を統合するボタンは見つかりません。
HubSpot にあるマージ機能は「レコードのマージ」と「選択肢のマージ」の 2 つだけで、どちらも別プロパティ同士の統合ではありません。
紛らわしいので、公式仕様を表で切り分けておきます。
| 機能 | 何を統合するか | 重複プロパティ整理に使えるか |
|---|---|---|
| レコードのマージ | 同じ会社/連絡先の重複「レコード」を 1 つに | ✕ (レコードの話) |
| 選択肢のマージ | 1 つのプロパティ内の「選択肢」を統合 (例: "新規"→"新規顧客") | △ (同一プロパティ内のみ) |
| プロパティのマージ | 別プロパティ A と B を 1 つに | ✕ 機能自体が存在しない |
つまり「業種」「業種_2」「industry」の 3 つを 1 本にまとめたいなら、機能を探すのをやめて手順に切り替えます。
やることは 4 つです。残す 1 本を決め、値を移し、依存を張り替え、旧プロパティをアーカイブする。この順番だけ守れば安全に統合できます。
前提と、整理後にできあがる状態を先に示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所要時間 | 重複 3〜5 グループで半日 (棚卸し 1 時間 + 移行・張り替え 3〜4 時間) |
| 前提条件 | HubSpot (全プランで実施可) / エクスポート権限 / プロパティ編集権限 |
| 追加コスト | $0 (標準機能のみ。ワークフロー利用は Pro 以上だが必須ではない) |
| 完成状態 | 重複プロパティが 1 本に集約され、フォーム・リスト・レポートが新プロパティを参照 |
以下、STEP 1 から順に進めます。
「どれとどれが重複しているのか、画面をスクロールしても把握しきれない」。整理の入り口で必ず出る声です。
原因は、HubSpot のプロパティ設定画面が 1 画面で全体を見渡せないことにあります。まず全体を一覧化します。
Settings > Properties でオブジェクト (Contact / Company / Deal 等) を選び、右上の Export から全プロパティを CSV で書き出します。書き出した CSV にはプロパティ名・内部名・型・グループが並ぶので、ここで重複候補をグルーピングします。
重複には、見分けやすい 3 パターンがあります。
〇〇 (import) が増殖しているつまずきポイントは、内部名 (internal name) を見ずに表示名だけで判断することです。表示名が同じでも内部名が違えば別プロパティなので、CSV では必ず内部名の列で突き合わせます。
エクスポートと再インポートの詳しい扱いは HubSpot のインポートで関連付けを崩さない方法 も参考にしてください。
棚卸しで重複グループが見えたら、次は「どれを正とするか」を決めます。ここを感覚で選ぶと、あとで値の移行量が跳ね上がります。
残すべきは「名前がきれいな方」ではなく、値が最も埋まっていて依存が最も多い方です。
判断基準は 4 つで整理できます。優先度の高い順に見ます。
| 判断軸 | 見る場所 | 残す方の条件 |
|---|---|---|
| fill rate (充足率) | アーカイブ時の右パネルに % 表示 | 値が入っているレコードが多い方 |
| 依存数 | 使用中アセット (フォーム/WF/リスト) | 参照が多い方 (張り替えが減る) |
| 型の正しさ | プロパティ設定の Field type | 用途に合う型 (日付は日付型など) |
| 命名 | 内部名・表示名 | 最後に名前だけ整えれば済む |
fill rate は、STEP 5 で使うアーカイブ画面の右パネルに「そのプロパティに値が入っているレコードの割合」として出ます。先にこの数字だけ各候補で見比べておくと、正を決めやすくなります。
よくある失敗は、名前がきれいな新しい方を残して、値が 8 割入っている古い方を捨てようとすることです。それをやると移行するデータ量が最大になります。名前は最後にリネームで直せるので、まず中身で選びます。
プロパティ設計そのものを見直したいなら、HubSpot のリードステータス設計 で「増やしすぎない設計」を解説しています。
残す 1 本 (正プロパティ) が決まったら、捨てる側に入っている値を正プロパティへ移します。移行手段は 3 つあり、件数と権限で選びます。
Starter プランならワークフローは使えないので、実務では 2 番目の「エクスポート & 再インポート」が主役になります。CSV 上で値を突き合わせ、正プロパティの列に寄せてから戻します。
つまずきポイントは、再インポート時のマッピングで正プロパティを取り違えることです。表示名が似ているので、必ず内部名で選びます。
もう 1 つの注意点があります。捨てる側と正側の両方に別々の値が入っているレコードは、上書きで一方が消えます。
両方に値があるレコードは、インポート前に「どちらを優先するか」を CSV 上で決めておきます。
数値どうしを足し合わせたい場合だけは、計算プロパティ (calculated property、Pro 以上) で結合する選択肢もあります。ただし多くの重複整理は上記 3 手段で足ります。
値を移しても、捨てる側のプロパティを他のツールがまだ参照していると、そのままではアーカイブできません。ここが整理で最も見落とされる工程です。
HubSpot はアーカイブ時に、参照元を 2 種類に分けて表示します。この区別が張り替えの順番を決めます。
| 表示区分 | 意味 | アーカイブへの影響 |
|---|---|---|
| Assets preventing archiving | ワークフロー・property card 等 | 外すまでアーカイブ不可 |
| Other assets using this property | その他の参照 | 外さなくてもアーカイブ可 (自動で外れる) |
やることは、Assets preventing archiving に出たアセットを 1 つずつ開き、参照先を捨てる側から正プロパティへ差し替えることです。フォームのフィールド、ワークフローの分岐条件、アクティブリストの条件が主な対象です。
特に見落としやすいのが、STEP 3 で選択肢 (ドロップダウン等) のマージを使った場合です。
HubSpot の公式仕様では、選択肢のマージはセグメント・ワークフロー・フィルターを自動更新しません。
依存を全部張り替えたら、捨てる側のプロパティをアーカイブします。いきなり完全削除しないのが安全策です。
Settings > Properties で対象プロパティにホバーし、More > Archive を選びます。右パネルで fill rate と使用中アセットを最終確認し、Assets preventing archiving が空になっていれば Archive property を押せます。
もし Assets preventing archiving がまだ残っていたら、STEP 4 に戻ってその参照を外します。この画面がゲートの役割をしてくれるので、壊れた状態でのアーカイブは起きません。
ここで大事な安全網があります。
アーカイブしたプロパティは 90 日間は Archived タブから復元でき、90 日を過ぎると自動で完全削除されます。
つまり「消していいか不安」なら、削除ではなくアーカイブで止めておけば 90 日の猶予があります。復元は Archived タブから Restore で戻せます。完全削除は Super Admin 権限が必要なので、誤操作も起きにくい設計です。
統合が終わったら、次の 4 点を確認します。ここが揃えば整理は完了です。
4 点が揃えば、あとは 90 日待ってアーカイブが自動削除されるのを見届けるだけです。不安が残るうちは、無理に完全削除する必要はありません。
HubSpot に「プロパティのマージ」は無い。この 1 点を受け入れると、重複整理は一気に進みます。
やることは、残す 1 本を fill rate と依存数で決め、値を移し、フォーム・ワークフロー・リストの参照を張り替え、旧プロパティをアーカイブする。この 4 STEP だけです。
アーカイブには 90 日の猶予があるので、削除の判断を焦る必要はありません。棚卸しの CSV さえ作れば、あとは巻末の実行キットが統合計画表まで組み立ててくれます。
私たち humbulls では、こうした HubSpot の棚卸しから運用設計まで一気通貫で伴走する Growth Partner サービス を提供しています。Starter からの立ち上げ全体像は HubSpot Starter 活用ガイド にまとめています。
本文の STEP 1〜2 を、そのまま AI で実行するためのキットです。プロンプトは Claude (ブラウザ版で可) にコピペすれば動きます。
種別: 判断キット 使うもの: Claude (ブラウザ版で可) 事前に用意するもの: STEP 1 でエクスポートしたプロパティ一覧 CSV (プロパティ名 / 内部名 / 型 / グループ / fill rate の列。fill rate が無ければ後で追記でも可)
プロンプト:
添付は HubSpot のプロパティ一覧です。似た意味のプロパティが乱立しているので、
重複グループを特定して「統合計画表」を作ってください。
【私の状況】
- オブジェクト: Contacts(記入例。自社の対象に置き換え)
- プロパティ一覧(CSV を貼り付け。列: 表示名 / 内部名 / 型 / グループ / fill rate):
業種, industry, contact, テキスト, 62%
業種_2, industry_2, contact, ドロップダウン, 8%
(以下、自社の CSV を貼る)
【必ず守る判断基準(本文の基準を転写)】
1. 重複は「表記ゆれ型」「英日混在型」「インポート産型」の 3 観点で必ずグルーピングする
2. 各グループで「残す 1 本」を、次の優先順で選ぶこと:
① fill rate が高い ② 依存が多そう ③ 型が用途に合う ④ 命名は最後に直す前提で無視
3. 名前がきれいでも fill rate が低い方は「残す」に選ばない(移行量が最大になるため)
4. 型が異なるグループ(例: テキスト × ドロップダウン)は「要注意」と明記する
【出力形式】
以下の列を持つ表で出力してください:
| グループ名 | 重複プロパティ(内部名) | 残す 1 本 | 選定理由 | 移行方法の推奨 | 要注意点 |
移行方法は「一括編集 / エクスポート&再インポート / ワークフロー」から、件数と型を見て推奨する。
出力の確認ポイント:
うまくいかないとき: